新たな宿泊の形「民泊」で広がるシェアエコノミー

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「民泊」という新しい旅のスタイルが急速に広まり、日本でも注目されている。ホテルや旅館などのいわゆる宿泊施設ではなく、一般の家庭が宿を提供するのが「民泊」だ。実際に使ったことはなくても、Airbnbという言葉を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。

Airbnbは、サンフランシスコに本社を置く企業が運営する、世界中のユニークな宿泊施設を取り扱うマーケットプレイスだ。その仕組みは、旅行者に部屋を提供したい人と宿を探している人をサイト上でマッチングするというサービスだ。

2008年のサービス開始以降、世界191か国、34,000以上の都市で利用され、日本でも2万件を超える物件が登録されているという。この勢いは、近いうちに世界中のホテルの部屋数を超えるのではないかとも言われているほどだ。

Airbnbに代表される「民泊」だが、果たして日本でも広がるのだろうか。実際にどんな人がどのように利用しているのか、そして民泊の普及によって何が変わろうとしているのだろうか。世界と日本の事例を見ながら考えてみたい。

日本ではまだ違法である民泊

部屋を貸したい人と旅行者を仲介するAirbnb。日本でも急速な広がりを見せているが、実は登録されている多くの部屋が日本の法律に違反していることは、ご存じの方も多いのではないだろうか。日本では、旅館業法で有料で客を泊める場合にはフロントの設置や男女別トイレを用意が義務付けられている。そのうえ、自治体からの許可を得なければ営業はできないのが決まりだ。

しかし、訪日外国人の増加などの影響で宿泊施設が不足している一方で、まだまだ観光客を増やしたい政府は、民泊を活用するために規制緩和に乗り出している。

海外では、どんな人がどんな風に利用しているの?

世界各国では、民泊はどのように利用されているのだろう?

Airbnbによると、Airbnbを介して民泊で宿泊した数は900万人にも上る。2011年に400万人だった宿泊者数が、右肩上がりに上昇していることがわかる。

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そして、Airbnbを応用したさまざまなビジネスも動き始めている。

ロンドンの企業、Spacehopが始めたユニークなサービスを紹介したい。貸オフィス版Airbnbともいうべきサービスだ。

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このサービスは、昼間の時間帯に空いた家を時間帯を指定してオフィスとして貸し出すというもの。「家は寝に帰るだけのためのもの」という人にはぴったりのサービスかもしれない。

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実際にサイトを見てみると、いくつもの「時間貸しオフィス」を見つけることができた。1日単位で借りることができるため、貸し会議室としても利用されているという。日本でも、時間単位で借りることができる貸会議室や、空き時間に使える仕事スペースなどをよく見かけるようになった。

宿泊という形態ではないため、民泊に比べると法で規制される範囲も異なる。昼間、家の持ち主がいない時間帯を使うことで、宿泊者と利用者は顔を合わせる必要がなくなるわけだが、民泊と同様、セキュリティ面での不安が残る。日本では、都心で日中留守にする家というと一人暮らしのマンションなども対象になってくるため、通常の住環境とのプライバシーの問題なども生じてきそうだ。ロンドンだけでなく、アメリカやフランスにも類似サービスがあるようだが、今後日本では広がるだろうか。

さらに、Airbnbのホストに対する付随サービスもビジネスになり始めている。

同じくロンドンの企業、HOSTMAKERは、ホスト向けにAirbnbに関するコンサルティングや、リネン・タオルなどのクリーニングを代行するサービスを始めた。

貸出しに適したインテリアデザインや、Airbnbのサイトで見栄えの良い画像が掲載されるように、撮影サービスなども行うという。Airbnbが今後急速に広まれば、日本でも類似のサービスが登場することも考えられるだろう。

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日本の「民泊」、今後どうなる?

日本ではどうだろうか。まだ法規制が進まないため、特区として合法的に民泊制度を始めたのが、東京・大田区だ。対象地域では、要件を満たす部屋は旅館業法対象外となり、アパートなどの空室を貸し出せるようになる。対象の施設と認められると、商店街の多言語マップ・多言語クーポン及び銭湯体験入浴券・銭湯多言語マップが配布されるなど、都からのサポートが期待できる。だが、対象施設になるためには「6泊7日以上の滞在が可能」という条件も満たす必要もあるため、一般の家庭が気軽に登録をするのには難しい側面もありそうだ。

民泊の普及による経済的な効果としては、訪日外国人の増加や、観光業の発展が挙げられるだろう。旅行者の面からみれば、一般的なホテルや旅館にはない珍しい宿泊施設を見つけることができたり、現地の家庭と触れ合うことができるといった、旅行のスタイルに幅が生まれるという点が考えられる。

さらに、民泊には、外国人観光客の誘致といった側面の他にも、空き家を活用できるという点で大きな期待も寄せられている。
総務省が発表したデータによると、2013年の時点で、日本の総住宅数に占める空き家率は、13.5%と過去最高になった。

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こうした空き家を活用すれば、新たにホテルや旅館を建設するよりも安く、そして早く宿泊施設を提供することができる。宿泊者と宿提供側のトラブルへの対応や法規制など、越えなければいけない壁は多いが、今後さらに注目が高まる分野であることは確かだ。

また「民泊」について新たな動きもある。5月13日に厚生労働省と観光庁が行った「民泊サービスのあり方に関する検討会」では、家主不在型の民泊でも管理者を置くことで営業を認める方針が打ち出された。

民泊には、居住する自宅の一部を旅行者などに貸し出す「家主居住型(ホームステイ型)」と空き家を貸し出す「家主不在型」とがある。そのうち、家主不在型民泊について、管理者を置くことを条件にホームステイ型同様に届け出のみで営業できるようにするという方針を打ち出したのだ。これまでの許可制から規制の緩やかな「届出制」とすることで、日本でも民泊をさらに広め、空き家などを活用していこうとする動きだ。このように、今後も民泊に関しては新たなルールや制度が作られていくことが予想される。

ちなみに、4月に発生した熊本地震ではAirbnbがいち早く無料宿泊を打ち出して話題にもなった。災害時の一時的な住居として、一時的なシェアオフィスとして、民泊をとりまくビジネスのアイデアはさまざまだ。

必要なものを、必要なときに、必要な人に「シェア」するという考え方。「民泊」をはじめとして、今後さらにさまざまなものがシェアされることが当たり前の世の中がすぐそこまで来ているのではないだろうか。

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